気象予報士雑感 その2

NHKの朝ドラ「おかえりモネ」もすでに終わりが近づいてきました。少し前の話になってしまいましたが、このドラマの主人公が見事気象予報士試験に合格して、民間気象会社に入社し、テレビにも出演して活躍する様子が描かれていました。

私は民間気象会社で仕事をしたのは約半年のごく短い期間だけですし、テレビやラジオに出演する気象キャスターの世界は見たことがないので、ドラマの主人公が活躍している舞台のことはほとんど知らないのですが、民間気象会社について思うことを書いてみようと思います。

民間気象会社雑感

1993年の気象業務法改正によって、民間事業者でも気象庁の許可を得れば予報業務ができるようになりました。気象庁の許可を得た民間事業者(個人でも相応の設備と人員がそろっていれば許可される)で「現象の予想」をするために必要な国家資格が気象予報士です。気象予報士の資格を持っていたとしても、必要な設備をそろえて気象庁の許可を得なければ気象予報はできません。

テレビ番組などで天気の解説をする気象キャスターには気象予報士の資格が必要なわけではありません。民間気象会社で気象予報に携わる職員であっても、直接「現象の予想」に携わらず、資料を集めたり、予報の検証のような補助的な仕事なら気象予報士の資格は必要ありません。

実際、私が以前、短期間勤めていた某民間気象会社では、気象予報士の資格を持っていない人が「現象の予想」に携わっている光景を目にしています。これは気象業務法違反だと思いますが、予報業務に必要な気象予報士の数を確保して、発表した予報の責任者が気象予報士の資格を持っていれば問題にならないということのようです。

くだんの朝ドラの主人公は一生懸命気象予報士の資格試験の勉強をして、見事合格を果たしたのち、民間気象会社に就職していましたが、民間で気象の仕事をしようと思うなら、気象予報士の勉強と並行して民間気象会社への就職活動をする方が建設的な気がします。

そして、そもそも気象予報に求められるスキルは「気象予報士試験に受かる技術」ではありません。幅広い気象の専門知識こそが必要なスキルですから、まずは気象を専門的に学べる所、気象の研究をしている教授のいる大学や気象大学校を目指すのが全うな方法だと思います。

民間気象会社は予報業務の民間開放以来、数が増えましたが、残念ながら実質的に気象予報士の資格が必要な独自の予報業務による売り上げは頭打ちであまり伸びていないそうです。

なぜか? 賢明な方ならお気づきだと思います。一番の理由は気象予報のような形のないものにお金を払う価値があると考える人が少ないからだと思います。テレビでも一部の有料チャンネルを除き、民放各社の番組は無料ですよね。実際には広告収入という形でスポンサー企業がお金を出すことによって成り立っているわけです。 気象予報の世界でも、視聴率が確保できるテレビの天気予報にはお金を払う人(スポンサー)はいるけど、民間に開放された本来の個別、独自の天気予報自体はあまり普及していないようです。21世紀は情報の時代とも言われているにも関わらず、本当にこれで良いのでしょうか?

気象予報士の資格が法的に必須ではない気象キャスターばかりが脚光を浴びて、本当に資格の必要な気象予報の仕事が食べていける収入を生み出さない社会。なんとか変えていく道を切り開きたいものです。

次回予告

この問題に一石を投じる可能性を感じるのが、朝ドラの最終章で展開されている、地域社会に密着した気象情報を提供する「あなたの街の気象予報士」というお話。次回はドラマで描かれていたお話に絡めて、このテーマを掘り下げてみたいと思います。